夢中になれる体験に出会うこと。小さな成功を重ねて子どもたちの自信を育む「テーマパークダンス」
みなさんは小さいころ、どんなことに夢中でしたか?
日が暮れるまでボールを蹴ったり、1日中図鑑を眺めたり――。時間を忘れて没頭し、試合で負けたり、舞台で踊りきったこと。失敗や成功の積み重ねが、大きな支えとして自分の中に残っているのではないでしょうか。
幼少期の体験は一生ものです。今回は、子どもたちの「やりたい!」の気持ちを大切に、自信を育む「テーマパークダンス」をご紹介します。
「楽しい」の気持ちで体が自然に動き出す
テーマパークダンスは子どもたちに馴染み深いディズニーなどの音楽がバックミュージック。自然と体が動き出す音楽で、楽しく踊りながら、クラシックバレエの技術やダンスの基礎を身につけていくクラスです。一人一人と向き合い、子どもたちの「楽しい」という気持ちや「やりたい!」という主体性を大切にしています。
<写真右:水木加陽子先生>
講師は水木加陽子さん。テーマパークダンサーとして5年経験を積んだ後、子ども向けダンスレッスンを立ち上げるため独立します。2012年のことです。そこで、初めての場所として選んでくれのが私たちの施設でした。現在は3~5歳クラス、小学生クラスの2クラスを運営しています。
テーマパークダンスは、どんなクラスなのでしょうか。
習い事の第1歩
3~5歳くらいの子にとって、ここでのクラスは「習い事の第1歩」だと思うんです。心がけているのは、自然に体が動くような馴染みやすい音楽で、「気づいたら踊れてた!」という雰囲気をつくること。何より「楽しい!」と感じてもらうことを大切にしています。
私がそうだったんですが、一つのことが出来るようになるとすごく自信になるんです。昨日まで出来なかった踊りが、今日出来るようになった。小さくても、確かな成長を実感することで、子どもたちは困難に立ち向かう強さと、自信を身につけていくんだと思います。
<ポージングの練習>
大人でも、出来ないことに取り組み続ける事は相当なストレス。感受性豊かな子どもたちなら尚更、苦しい、辛いという思いもするでしょう。それでも、この時期に「壁」を乗り越えた経験は、大きな「糧」になるはずです。
小学生クラスでは、また雰囲気が違います。
小学生の子どもたちには、ストレッチや筋力トレーニングといったダンスに必要な基礎を鍛えるところから行います。
<小学生クラスは筋力トレーニングも行います>
それから、練習成果を発表する場として「発表会」や「ショー」への出演も積極的に行っていて。舞台に立ち、人前で練習の成果をみられる経験は、子どもたちにとって大きな成長につながると思うんです。
本当にもう、ビックリするくらい私の想像を超えていきますね(笑)そうやって、新しい経験、失敗も含めて繰り返すうちに「できるようになった!」ということが自信につながって。例えば内気だったのに教室で発言できるようになるとか、ダンスを通じて「できる」を積み重ねることで、ダンス以外のことにも前向きに取り組むようになって欲しいと思っています。
<NHKみんなのうた「てんとうむし」でお馴染みのワタナベフラワーのバックダンサーとして出演>
ただ「ダンス」を上達してほしいだけではなく、ダンスを通じて伝えたいことを話す水木さん。そんな水木さんとダンスとの出会いは、5歳にまで遡ります。
私、小さい頃はすごく引っ込み思案だったんですよ。休みの日も家にずっといるような子で。それを心配した母が、たくさんの習い事に連れ出したんです。その中で唯一「これがしたい!」といったのが、バレエでした。
それからバレエにのめりこんで、5歳から18歳まで学校が終わったらバレエ、休み時間も友達とバレエの話、休みの日もバレエ—。バレエ漬けの日々でした。進路も決まりバレエをやめてようやく「さあ遊ぶで!」というくらい、バレエ一筋の生活を送っていました(笑)
そこまでのめりこみ、プロのダンサーとなり、また先生として活動する水木さん。何が原動力となっているのでしょうか。
「本物の体験」が夢中になるきっかけ
小さいころから、母がたくさんの舞台に連れ出してくれました。一番印象に残っているのが、”劇団四季 キャッツ”のミュージカルです。手が届くほど身近な距離で表現するダンサーに、「私もそうなりたい!」と強く魅了されました。それからバレエ一本よりはミュージカルやジャズダンスなど表現活動をしていきたいと思うようになりました。
<今でも足繁くミュージカルに通っています>
強い憧れを抱く「本物の体験」に触れたこと。その経験が、水木さんを突き動かす原動力になっていると言います。そのため、クラスで学ぶ子どもたちの親御さんにも、たくさんの舞台やミュージカルに連れて行ってあげてくださいと話すそうです。
ニューヨークで気づいた「表現力」
人を魅了するミュージカルの世界にのめり込んだ水木さんはその後、ミュージカルを学ぶべく学校へ進学。また学校以外に関西の劇団に所属し、ミュージカルの世界やダンスの表現の仕方について指導を受けたそうです。
劇団の先生に、いろいろと教えていただいて。その先生が、ニューヨークに勉強しに行くと聞いて、すぐに「ついていきます!」って。思い立ったらすぐ行動。行きたい思いが強すぎて、ビザを取る時間ももったいないと思い、観光ビザで3か月ギリギリ滞在しました(笑)。
<ニューヨークに再訪した時の1枚>
ニューヨークでは、ブロードウェイに出ている人がレッスンを受けに来るんです!もうそれだけで大興奮でした。プロの舞台に立っている人たちと一緒の場所にいて、技術も高いんですが、それ以上に、自分のものにするということを強く感じたんです。もう表現力が全然違うなって。
「表現力が違う」。芸術音痴な私にはイメージが沸かなかったので、詳しく聞いてみました。
日本の場合、先生の振りを正しく覚えて、「先生と同じように正しく踊る」ことがゴールだったんです。でもニューヨークでは、与えられたものを自分のスタイルにして表現する。踊るというよりはどう演じるか?ということが一番大切にされていたんです。
足がどれだけあがるか、綺麗に回れるか、そういう技術ももちろん大切なんですが、例えば手を突き出したとして、「その先には何があるの?」「今、どういう場面で踊っているの?」その一つ一つの動きが「何を表現しているか」が大事にされていたんです。
「技術はもちろん大事だけど、もっと大事なことがあるということに気づけた。」そう話す水木さんにとって、ニューヨークでの経験は大きな転機になったそうです。それはダンサーとしてだけでなく、先生としても。
少し考えた後、水木さんはこう続けます。
あんまり「こうしなさい」って言わないようにしているんです。まぁ言っちゃう時もあるんですけど(笑)言葉で押し付けるんじゃなくて、「今の状態だと、見に来てくれたお友達が感動してくれるかな?」とか、子どもたち自身が自分で頑張りたい!と思えるような。そういう関わりを心がけています。
<夏に行ったイベントの様子>
水木さんのクラスを見ていると、何より子どもたちの気持ちを大切にしていることが感じとれます。言葉かけ1つとっても、子どもたちの内側に問いかけるような言葉を選んでいるよう。それは「叱られたから」、「言われたから」という外から与えられる外発的な動機ではなく「楽しいから」、「もっと上手になりたいから」そんな内側からの動機を育むような関わりだと思う。
恥ずかしがり屋の子が、ダンスを通じて明るくなる。大きな声が出なかった子が、発表会を経て大きな声で挨拶ができるようになる。ダンスを通じて積み重ねた成功体験で、自分の可能性を広げていってほしいですね。
「夢中になる」に出会うこと
情報にアクセスしやすくなりましたが、自分の時間すべてをかけるほどの体験に出会うことは、以前にも増して難しくなっているように感じます。「モノよりコト」と言われる時代、みなさんはどんな体験を子どもたちに贈りたいですか?
少しでもテーマパークダンスのことが気になったら、一度レッスンの見学にいらしてみてください。きっと楽しい音楽に、自然と体が動き出すと思いますよ。
>「テーマパークダンス」を覗いてみては?
ようこそ夢の国へ!! テーマパークダンス -楽しく身体を動かそう!-
>レッスン時間
① 15時~16時 (3歳~6歳クラス)
② 16時10分~17時10分 (小学生クラス)